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アトピー性皮膚炎は鍼灸・動作改善による体液循環が鍵

あけび鍼灸院では鍼灸によるアトピー性皮膚炎の治療も行っています。
アトピー性皮膚炎について、さまざまな原因が考えられており、未だ解明されていないことも多数あります。
ここではアトピー性皮膚炎で知られている原因とあけび鍼灸院で行っている鍼灸・動作改善による治療についてご紹介したいと思います。
アトピー性皮膚炎とは
アトピー性皮膚炎という名前は、今では一般に広く知られる皮膚症状となっています。しかし、その原因については、一般には、アレルギーで起こる、という程度で詳細はよく知られていないのではないでしょうか。
アトピーとはギリシャ語の「アトポス」という言葉に由来し、その意味は、「特定されていない」「不可思議な」というものです。
古くからアトピー性皮膚炎の存在は知られていましたが、その原因は長く不明なままでした。
日本皮膚科学会によるアトピー性皮膚炎の定義は以下のようなものです。
「アトピー性皮膚炎は、増悪・寛解を繰り返す、瘙痒(そうよう:かゆみのこと)のある湿疹を主病変とする疾患であり,患者の多くはアトピー素因を持つ」
少し難しいので、わかりやすくすると、
「かゆみを伴う湿疹が悪化したり良くなったりを繰り返すような病気のことで、その患者さんが「アトピー素因」と呼ばれる要因をもっていると確認されている場合にアトピー性皮膚炎と呼ぶ」、ということです。
湿疹やそのかゆみがあるだけではアトピー性皮膚炎とはなりません。「アトピー素因」が確認されるかどうかが一つの診断に要素です。
では、その「アトピー素因」とは一体何なのでしょうか。
アトピー素因とは何か?
アトピー素因は、さきほどの日本皮膚科学会によると以下のように定義されています。
または、② IgE 抗体を産生し易い素因.
これまたわかりにくいですね。
①の家族歴・既往歴とは、
まず一つには家族の中にアトピー性皮膚炎と診断された人がいるかどうかです。もしそうであるならば、ご本人もアトピー素因を持っている可能性あると判断されます。または、ご本人が気管支喘息,アレルギー性鼻炎・結膜炎,アトピー性皮膚炎のうちいずれか、あるいは複数の疾患を持っている(いた)場合にも、アトピー素因を持っている可能性があると判断されます。
②のIgE抗体を産生しやすい素因というのは、これまた何のことかわかりにくいですが、端的にいうと、アレルギー反応の原因物質(アレルゲン)が体に入ってきたときに、その原因物質と結びつくのがIgE抗体というもので、IgE抗体とアレルゲンが結びつくことで、体の免疫機能が反応します。この反応が過剰になると、過度なアレルギー反応となり、皮膚炎やかゆみなどが出てきます。IgE抗体が体に多いたくさんある状態(産生しやすい)だと過度なアレルギー反応が起きやすい、ということになります。
アレルギー体質、と一般によく言われると思いますが、アレルギー検査で調べているのがこのIgE抗体です。IgE抗体は200種類以上が確認されており、アレルギー物質毎に微妙に異なります。どのIgE抗体が反応するかを検査で調べれば、どの食べ物や環境物質に過敏に反応するかがわかるということですね。
アトピー性皮膚炎の患者さんには、このIgE抗体が体にたくさん作られている傾向があるということで診断の一つの指標になっているのです。
このように家族歴・既往歴、IgE抗体の産生が多いかどうか、こういったことがアトピー素因として定義されています。
アトピー素因は指標であって、原因ではない。
では、アトピー性皮膚炎の改善のためには、このアトピー素因をどうにかすればいいのではないか?と思われるかもしれません。
しかし、家族歴・既往歴はどうにもなりませんし、IgE抗体の産生しやすさも、一体どうやって改善すればいいのか、よくわかりませんよね。
考えなければいけないのは、「家族歴・既往歴、IgE抗体の産生しやすさ」というのは、診断のための指標であって、原因そのものではない、ということです。
何かの原因があって、家族のどなたかがアトピー素因を持つことになったのであり、IgE抗体の産生のしやすさというのも、何かの原因があってそうなるのです。もちろん、遺伝という先天的な要素もあるかもしれませんが、それにしてもアトピー性皮膚炎がよくなったり悪くなったりすることの説明はあまりつきません。
つまり、「家族歴・既往歴、IgE抗体の産生しやすさ」というのは一つの傾向を示しているのであって、直接的な原因ではなく、本当の要因は別にある可能性があるということです。
家族にアトピー性皮膚炎があったから自分もなってしまったなんて、なんかちょっと不可思議というか納得性に欠けますよね。家族であっても一人ひとりの体は違います。また置かれた環境も異なります。原因については一人ひとりみていく必要があるのです。
「家族歴・既往歴、IgE抗体の産生しやすさ」ということではなく、そこにたどり着くまでの経過やその原因を掘り下げていく必要があるのです。
例えば、よくある患者さんの傾向としては、会社や家庭でストレスの高い環境に長い間いた、とか、食事が栄養の偏ったものを長期間食べていた、とか、そういったことも観察されます。
このあたりもよく観察して、実際の治療は、その一人ひとりの原因をある程度まとめた形で分類し、その分類によって適切な治療を施していくことになります。
あけび鍼灸院でもアトピー性皮膚炎の改善のための鍼灸、動作改善という治療を行っていますが、次に述べるような傾向の方について効果的だと考えています。
動作学の視点からアトピー性皮膚炎の治療法:体液循環の改善
あけび鍼灸院ではモーションセレクトセオリーという動作学の視点から、鍼灸に限らず、マッサージを含めた様々な治療を行っています。
モーションセレクトセオリーの詳細は、別のページでご紹介しますが、なぜ動作学の視点から治療を考えるのかというと、人間も動物の一つであり、体を動かす機能や体の動かし方と病気が密接に関係していると考えているからです。
それはアトピー性皮膚炎であっても同じです。
アトピー性皮膚炎になる方のうち、一定の割合で観察されることとして、体が固まっており、動きが硬いことが挙げられます。
かゆみが先か、動きが硬くなったことが先なのかは、わかりませんが、アトピー性皮膚炎の症状をお持ちの方のうち、少なからず体の動きが固かったり、全身が内側に丸まっていたりしている方がいらっしゃいます。
おそらく次のようなことが起こると、体の動きが硬くなったり、丸くなったりするのではないでしょうか。
・痒いから仕事に集中できない。
・暴飲暴食などが原因で心身にストレスがかかり、疲れている。
・皮膚炎のような症状がでて、それを人に見せたくないから外にでない。
・かゆみのある部位がこすれて更にかゆくなるため動きを制限する
他にもいろんなケースがあると思いますが、共通しているのでは運動を制限する、体の動きを制限する、普段はしないような動きをする、同じ動きを繰り返す、体が緊張している、などです。
このようなことが続くと、自律神経が乱れやすくなりますし、それによって体が緊張状態になり、筋肉が硬くなると、全身の血流が悪くなっていきます。
血は体の中の老廃物を流したり、栄養素を全身に届けたり、見張り番である免疫機能を正常に維持させるために、必要な体液の一つです。血の巡りが悪くなると、体の中の体液全体の循環が悪化していきます。
この体液循環の悪化によって、必要な栄養素や酸素が届かない、免疫機能が落ちていく、そうすると体の外からアレルギー物質が入ってきやすくなったり、あるいは特定の部位では過剰に反応してしまったりするのではないかと考えています。
この反応が行き過ぎるとアトピー性皮膚炎に発展するのではないかと考えられるのです。
あけび鍼灸院では、上記のような体の動作の状態が悪化していることが原因のケースに対して、鍼灸やマッサージ、動作改善により、血液を中心とする体液循環を改善することでアトピー性皮膚炎も改善できると考えています。
血流などの体液循環の改善による治療
それでは、血流などの体液循環の改善による効果について事例をご紹介します。
<アトピー性皮膚炎をお持ちの事例>
アトピー性皮膚炎をお持ちということで、ご来院されたNさんは、肘の内側など、関節部位にアトピー性皮膚炎が認められました。
このような関節部位はアトピー性皮膚炎の後発部位でもありますが、同時に血流が滞りやすい部位でもあります。
このNさんの事例では、体の血流の改善の一つとして、まず前腕のアトピー性皮膚炎の患部に近くに鍼灸を施したところ、鍼灸を施した箇所に内出血が出やすい傾向が認められました。
鍼灸治療で使用される針は、非常に細く、髪の毛ほどの太さであり通常は内出血を起こすことは少ないのですが、皮下組織の毛細血管がわずかに傷ついてしまうと、皮下組織に血液が流れてしまいます。通常は、血液を含めて体液により上手に排出されるため、内出血は起きにくいのですが、このケースでは青紫や黄色の「アザ(内出血)」が起きやすい傾向が確認されました。
この内出血のアザは、通常、数日から1週間程度で消えるので問題はないのですが、この患者さんのケースでは、2週間近くアザが消える前にかかりました。
そこで、前腕部分について、オイルによりマッサージを行い、アザの周辺を含めて血流の改善を行う治療を行いました。するとわずか2日間でアザが速やかに消失しました。
この結果から、血流を含む体液循環の悪さが原因である可能性が考えられました。
そこでマッサージを含めて、血流の改善を促す治療を施していくことで、痒みまで徐々に弱まっていくことが確認されました。しかし、ストレスがかかったり、治療をしないと痒みがぶり返してしまうことも観察され、動作改善による根本的に体の使い方や機能を見直し、体液循環を改善することを施すことになりました。
現在も治療中ですが、徐々によくなっている傾向が確認されています。
このように体液の循環を改善することが効果的である事例もあるのです。
そもそも、アトピー性皮膚炎で見られる「掻く」という行為自体も、実は体の防衛本能として、皮膚を動かし強制的に血流を流しているのではないかと考えています。
そうであるならば、掻く以外の方法で自発的に体液循環の改善を行うことで改善が期待できると考えられるのです。
体液循環の改善は動作改善・体づくりから
先ほどの事例では、血流の悪化がアザの出現や回復の遅延という形で見られました。これは体液循環の悪化により、毛細血管内の酸素や栄養が不足し、血管の細胞の弾力性が低くなるため、血管がもろくなっておこったものとかんがえられます。
単にマッサージをするだけでは一時的な改善は望めても、その後ぶり返していくということが起こります。
これを起こさないようにするためには、体の状態を最適な状態へ持っていくことが必要です。その最適な状態とはつまり「血液やリンパ液、細胞から細胞への体液の移動を含めた、体液の循環がスムーズな状態」です。
ご自身の体の機能や動作の癖がどのようになっているかを知り、正しい動かし方にしていくこと、そして同時に筋肉や体のコリをほぐして体液循環の”質”を上げていくことが必要になります
血管とリンパ管は体の各部にゆき届き、体内の掃除と栄養を運び自律神経や免疫にも大きな影響があります。
その血管やリンパ液の状態を良い状態に保つ一つの要素は、それらが収められている筋肉や細胞の状態を柔軟にすることです。それは体の動作や動かし方によって影響されることは言わずとも知れていると思います。